シャーロック・ホームズの知恵 [ ┗研究書・パスティーシュ]
ホームジアンとして、ホームズ研究者を名乗りたいのですが、まだまだ駆け出し中。今のステージとしては、先人の研究を学んで、これまでの研究領域とその成果を把握する段階。
パロディやパスティシュを読む楽しみもあるのですが、まずは古今の研究書を集めて読むことが優先されます。
日本語の研究書も多くありますが、やはり歴史的価値からいっても、長沼弘毅さんの著書をはずすわけにはいきません。
長沼弘毅さんは大蔵官僚でありながらシャーロック・ホームズの研究家でもあった方で、日本のシャーロッキアンの草分けとも言える存在です。ホームズ研究書を9冊書かれていますが、なにぶん古い書籍のため入手が困難です。ヤフオクで少しずつ買い集め、やっと8冊まで揃えることができました。(ちなみにあと一冊は「シャーロック・ホームズの紫烟」Amazonでも出ているので近く購入予定。)
ということで、そろそろコンプリートできそうなので、出版順にきちんと読み始めようと思い手に取ったのが、第一作、「シャーロック・ホームズの知恵」
昭和36年に出版された本です。なんと50年前の本。しかしながら、この時点でホームズ研究というのはかなり確立しており、主要なテーマもほぼ網羅されていたことが伺えました。
長沼さん曰く、本書の位置づけは、「これから本格的研究に入る前に、軽いウォーミング・アップをした程度のもの」(はじめに)だそうです。
ドイルの略歴を振り返りつつ、原典や先行研究を引き合いに ホームズやワトソンの人物に迫るための切り口を紹介しています。ホームズの大学、ホームズと女性、ベーカー街221Bの場所等々、さまざまなシャーロッキアンが挑んできた問題が簡潔に述べられます。あまり深く諸説に入り込んでいないのは、ウォーミング・アップ故でしょう。
従って、これまで別の書籍で既知の情報が多かったのですが、この本で知ったこともいくつかありました。一般的とされている説、例えば「ホームズのモデルはベル教授である」とか「ドイルにとって本文は歴史小説でホームズは余技である」とかに対して、ドイルの遺族が反論していたことなどは初めて知りました。また、世界的なシャーロッキアン団体である、アメリカのベーカー街イレギュラーズの成り立ちや会則なども、他の本で読んでいたのかもしれませんが、改めて知ることができて新鮮でした。
一つだけ、個人的に物足りないというか、立場が違うと思ったのが、ホームズ研究の立ち位置でした。ホームジアンのゲームのルールとして、ホームズは実在し、ドイルは出版エージェントにすぎない、という立場から論考するというのがあって、私はまさにこうした立場で研究を進めたいと思っているのですが、長沼さんはあくまでホームズをドイルの創作上の人物として扱っていることが本書から分かりました。この方が、ドイル側からの研究ができるという意味で視野の広い研究ができるのかもしれませんので、完全に個人の志向の問題かと思います。
もう一つ、ベーカー街221Bの位置については、その後多くの研究がありましたので、概論とは言え今の221Bにあったという仮定は大胆にすぎるなという印象を持ちました。
しかしながら、50年も前にこれだけのことが網羅されていたという事実は驚かされるとともに、今更ながらホームズ研究の奥深さを思い知らされました。しかもまだ「オードブル」の段階で、これだけのことが書かれているとすれば、残り8冊でどこまで深まるのか、楽しみでもあり恐ろしくもあります。







Tomoさんはゲーム派で長沼さんはアンチ・ゲーム派(?)なのですね。それは興味深いですね! ホームズ研究者ではどちら派が多いのでしょうか。「ホームズと女性」では特に新説はなかったですか?! 第二作以降のレビューも楽しみにしています。
by ぐうたらぅ (2010-09-15 20:10)
>ぐうたらぅさん、こんばんは。
長沼さんがアンチ・ゲーム派か、まだ断言できませんが、私はゲーム派、しかも正典至上主義なのは間違いないと思います。
しかし、厳密には分けずらいところはあるかもしれないですね。長沼さんもドイルの創作と書きつつ、ホームズの描写は実在を前提にしてたりしてますので。
by Tomo (2010-09-16 00:00)